センター概要

IT社会の発展に伴い、サイバーセキュリティへの対応が喫緊の課題となっています。これまでセキュリティ確保のためにさまざまな技術分野での研究がなされ成果を上げてきていますが、それを上回る勢いでセキュリティ脅威は増大し、社会的損失も増大しています。新しい攻撃への防御やその被害を軽減させるためには、一部の専門家がサイバーセキュリティの確保に取り組むだけではもはや十分ではなく、全員参加型ですべての主体が連携し、多層的に社会全体でセキュリティ脅威に対して防御策を講じる必要があります。そのためには、横断的・中長期的な視点での人材育成も必要になります。しかしながら、社会全体でセキュリティを確保するための総合的・体系的な取り組みは未だ十分とは言えません

この課題を解決し、社会的に大きな課題となっている情報セキュリティの先進的研究と教育を強化すべく、情報理工学系研究科が責任部局となり、工学系研究科、情報基盤センターと連携して、連携研究機構「情報セキュリティ教育研究センター」を2019年2月1日に設置し、研究教育活動を開始しました。

本センターは、実学としてのシステムセキュリティと学問としてのセキュリティ基盤技術を包括的に研究することで、現在のセキュリティ技術の枠組みを超えた新たな情報セキュリティ技術体系を構築するとともに、先進的かつ実践的な情報セキュリティ教育体系の整備と次世代を担う人材の育成を推進してまいります。

センター長挨拶

情報理工学系研究科・システム情報学専攻 教授 中村 宏
情報理工学系研究科
システム情報学専攻
教授 中村 宏

IT技術の飛躍的な進展により、サイバー空間(情報空間)とフィジカル空間(実空間)の高度な融合が進み、私たちの日常生活や経済活動を便利にそして豊かにしています。例えば、SNS(Social Networking Service)が人と人のつながりに果たす役割は驚くほど大きくなり、工場や農林水産業あるいは介護の現場などでは、センサーによって得られたデータを解析することで安全性の向上、作業の効率化、生産性の向上がもたらされ、あるいは自動運転技術にも大きな期待が寄せられているなど、枚挙にいとまはありません。一方で、フィジカル空間にいる私たちとサイバー空間と融合の深化に伴い、私たちがサイバーセキュリティの脅威を受ける機会は飛躍的に増大しており、今や、いつでもどこでも誰もが脅威に晒されているといっても過言ではありません。

近年のセキュリティ脅威は、攻撃対象の多様化と攻撃方法の高度化という特徴があります。例えば、人の管理が及びにくくセキュリティレベルが異なる大量のIoT機器がサイバー空間につながることになり、これらの機器が新たに攻撃対象になり深刻な社会的損失を招く事態が発生しています。攻撃方法に関しても、スペクター(Spectre)やメルトダウン(Meltdown)と呼ばれるハードウェアの脆弱性を突いた、プロセッサの動作原理の根幹の再考を迫る全く新しい攻撃や、標的型攻撃のように攻撃対象者の社会的立場や社会情勢を利用するものも出現しています。このようにセキュリティ脅威の多様化と高度化が進む中で、コンピュータシステムの基本原理を理解する必要性が改めて指摘されるとともに、このような新しい攻撃への防御やその被害を軽減させるためには、従来の技術進展の外挿だけでは限界があることも指摘されており、セキュリティを運用する現場での実際の脅威を分析しその知見を研究開発に活かすとともに、研究開発の成果をいち早く現場で活かす、実学と学問の統合が必要不可欠となっています。本センターではその実現を目指し、広範なセキュリティ関連基礎分野で先進的な研究に取り組んでいる情報理工学系研究科と工学研究科、および、本学のネットワーク運用の責任部局である情報基盤センターが密に連携し、実学としてのシステムセキュリティと学問としてのセキュリティ基盤技術を包括的に研究していきます。

人材育成に関しても、広範な学問領域に渡るセキュリティ分野の効果的な教育体系構築に取り組み、演習を含む実践的かつ体系化された実践的人材育成プログラムを構築し、文系も含む学部生、大学院生、および社会人を対象とした教育を実施することで、サイバーセキュリティの確保に対して全員参加による協働した取り組みの推進を目指します。このように横断的・中長期的な視点でセキュリティ人材育成にも取り組み、産学官民とも連携しながら、社会全体での情報セキュリティの確保を通じ、Society5.0が目指すデータ駆動型社会の実現・発展に寄与してまいります。