センター概要

IT社会の発展に伴い、サイバーセキュリティへの対応が喫緊の課題となっています。これまでセキュリティ確保のためにさまざまな技術分野での研究がなされ成果を上げてきていますが、それを上回る勢いでセキュリティ脅威は増大し、社会的損失も増大しています。新しい攻撃への防御やその被害を軽減させるためには、一部の専門家がサイバーセキュリティの確保に取り組むだけではもはや十分ではなく、全員参加型ですべての主体が連携し、多層的に社会全体でセキュリティ脅威に対して防御策を講じる必要があります。そのためには、横断的・中長期的な視点での人材育成も必要になります。しかしながら、社会全体でセキュリティを確保するための総合的・体系的な取り組みは未だ十分とは言えません。

この課題を解決し、社会的に大きな課題となっている情報セキュリティの先進的研究と教育を強化すべく、情報理工学系研究科が責任部局となり、工学系研究科、情報基盤センターと連携して、連携研究機構「情報セキュリティ教育研究センター」を2019年2月1日に設置し、2022年7月より生産技術研究所との連携も開始し、研究教育活動を行っております。

本センターは、実学としてのシステムセキュリティと学問としてのセキュリティ基盤技術を包括的に研究することで、現在のセキュリティ技術の枠組みを超えた新たな情報セキュリティ技術体系を構築するとともに、先進的かつ実践的な情報セキュリティ教育体系の整備と次世代を担う人材の育成を推進してまいります。

センター長・挨拶

情報理工学系研究科 情報理工学教育研究センター 教授 関谷勇司
情報理工学系研究科
情報理工学教育研究センター
教授 関谷 勇司

現代社会においては、IT 技術とAI技術の急速な進歩によって、様々な分野でのIT化と効率化が進み、より高度なIT社会が実現されようとしています。このような状況下で、社会はますますデジタル依存度を高めており、それに伴い新たなサイバー脅威や攻撃のリスクも増加しています。サイバー攻撃はますます巧妙化・多様化しており、個人情報の漏洩、企業機密の盗難、インフラストラクチャーへの攻撃など、被害の規模や影響は深刻です。これらのサイバー脅威に対して効果的なサイバーセキュリティ対策を講じることは、社会全体の安全と信頼性を確保するために極めて重要です。

近年のサイバー攻撃は、私たちが直面する脅威の深刻さを如実に示しています。例えば、2017年のWannaCryランサムウェア攻撃では、世界中の多くの企業や政府機関、病院が標的となり、大規模な被害をもたらしました。その後もランサムウェア攻撃による被害は増大しており、国内外の多くの企業や組織において、大規模なシステム障害や情報漏洩が発生しています。また、全世界で利用されるオープンソースソフトウェアに悪意のあるコードが埋め込まれ、ソフトウェアの供給プロセス自体の脆弱性が明らかになる事例も発生しています。ソフトウェアのサプライチェーン攻撃は、信頼されたソフトウェアやサービスを介して間接的にシステムに侵入するため、検出が困難であり、その影響は甚大です。これらの事例は、サイバー攻撃が社会システム全体に多大な影響を及ぼし得ることを示しています。

さらに、アクティブディフェンスやセキュリティ・バイ・デザインといった新たなサイバーセキュリティ対策の重要性が増しています。セキュリティ・バイ・デザインとは、製品やシステムの設計段階からセキュリティ対策を組み込む方策です。システムのワークフローやソフトウェアサプライチェーンリスクに対する脆弱性チェックを設計段階から盛り込むことで、被害を未然に防ぐという能動的なサイバーセキュリティ対策となります。

このように、サイバーセキュリティ対策は多様化しており、私たちの生活や社会の安全を守るためには、対策の強化と推進が不可欠です。これからのサイバーセキュリティ対策における重要な課題は、新たな脅威に迅速に対応できる技術開発と、様々な分野においてサイバーセキュリティの専門知識とスキルを持つ人材の育成です。

SIセンターでは、ユーザの立場に立ってセキュリティをアシストする「セキュリティDX」技術の研究開発とともに、未来のIT社会の安全を守るためのセキュリティ人材育成に貢献しています。2022年に開始した学部横断型教育プログラム「サイバーセキュリティ教育プログラム」はその一例であり、サイバーセキュリティ対策に必要な基本的なIT技術の理解からシステムへの適用方法、社会インフラとしてのシステム構築と運用、組織におけるセキュリティ体制の形成まで、セキュリティ人材に必要な知識やスキルを横断的に学べるプログラムを提供しています。SIセンターでは、今後も社会生活と社会基盤の安全性向上に寄与すべく、民間企業や政府機関との連携を深め、セキュリティ DX技術の研究開発とセキュリティ人材育成を通じて、社会全体のセキュリティレベル向上に寄与していく所存です。

情報セキュリティ教育研究センター概要

ロゴマークについて

ロゴマーク

情報セキュリティ教育研究センターのロゴは、英語名称の
Security Informatics education and research center」の頭文字の「SI」を表しています。

このロゴは形や色が異なる9つの部分から構成されていますが、それぞれが適切な向きで適切な所に配置されてこそ初めてSIを表すことができています。すべての主体が適切な役割を果たしながら協調・連携することで、社会全体でサイバーセキュリティを確保していきたい、という願いを込めています。